「睡眠」は、人間が生活する上で欠かせないものですね。人間は必ず寝ます。何気なく私たちは眠くなれば寝ていますが、果たしてその睡眠は効果的なものになっているでしょうか?実は気づいていないだけで、あなたの睡眠は質が低く、そのせいで日中、100%のパフォーマンスを発揮できていないかもしれません。日中眠くなる、集中力が続かない、、疲れがとれない、、、もしかしたらこれらはすべて、睡眠が原因かもしれません。
今回は、私たちが毎日行う「睡眠」をできるだけ質の高いものにするためにできることを、厚生労働省が2014年に発表した指針に沿って、紹介していきます。
>>今回の参考文献はこちらです。
「健康づくりのための睡眠指針 2014|厚生労働省」
より充実した睡眠をとるための情報提供として平成15年に作られた「健康づくりのための睡眠指針」が、平成26年(2014年)に改定されました。情報たっぷりです。
質の高い睡眠をとるために知っておくべき12のこと
それでは、厚生労働省によって示された「睡眠12か条」を紹介していきます。
1) 良い睡眠で、からだもこころも健康に。
睡眠は、身体の健康にとっても、心の健康にとっても欠かすことはできません。そして、身体と心の疲労を一番回復してくれるのが「睡眠」です。睡眠の「量(=睡眠時間)」が少ないと疲労は回復しませんし、睡眠の「質(=眠りの深さ)」が悪くても疲労は回復しません。量か質、どちらかでも悪くなってしまうと、自分の健康に悪影響です。よって「良い睡眠」というのは、充分な睡眠時間を確保しつつ、深い眠りにつくことを言います。
うつ病になる方のほとんどは「不眠症」にもなっていることがわかっています。このことからも、睡眠不足が「心」に悪影響を及ぼしていることがわかります。
2) 適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを
良い睡眠をとるために、「運動」と「食事」は切っても切り離せない関係にあります。
2-1) 「運動」は睡眠の質を高める
「運動」は、眠りの質を高める(=深い眠りにつくことができる)ことがわかっています。もう少し具体的に言うと、布団に入ったらすぐに眠れるようになり、さらに夜中に目覚めることがなくなってきます。単純に考えて、運動をすると疲れるので、身体は疲労回復をしようとするため、結果眠くなります。
ですが、寝る直前(1〜2時間前)の運動はやめましょう。寝る前はリラックスしなくてはいけません。副交感神経を優位にして、心拍数を下げ、体温を下げることですぐ眠りにつくことができるようになるのですが、運動をすると交感神経が優位になってしまい、心拍数は上がり、体温も上がってしまいます。寝る前の運動は控えましょう。
寝る前にリラックスすることが重要と上記しましたが、そのリラックスを促す方法として「お酒を飲む」ことはオススメできません。「ちょっとお酒を飲むとすぐ寝られるから」と言う人がいますが、寝る前にお酒を飲むと、すぐに寝ることはできても、夜中目覚めやすくなります。そして、一度目覚めたら眠れなくなります(=アルコールによる覚醒作用)。結果として、眠りにつくのは早くても、睡眠の質的・量的には悪くなってしまいます。
「お酒を飲む」ことと同じように、寝る前にやることとしてオススメできないのが「タバコを吸う」こと。タバコに含まれる「ニコチン」にも覚醒作用があるため、寝つきづらくなります。
2-2) 朝ごはんを食べて脳を起こそう!
「朝ごはんを食べる」ことは、脳を目覚めさせるため、朝からしっかり活動ができるようになります。寝る前は心拍数を下げて体温を下げてリラックスしましょうと言いましたが、朝は逆に心拍数をあげて体温をあげていかなければいけません。朝ごはんを食べることで、脳や内臓が動き始め、交感神経が優位になっていきます。
3) 良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
睡眠不足の人や不眠症の人は生活習慣病になりやすい、ということがわかってきています。
「睡眠時無呼吸症候群」というのを聞いたことはありませんか?肥満の方によく起こると言われていますが、寝ているときに鼻やのどの空気の通り道がふさがれることで呼吸が一時的に止まるものです。この睡眠時無呼吸症候群は、治療をしないと、高血圧や糖尿病、脳卒中、不整脈など、様々な生活習慣病になるリスクが高くなってしまいます。
4) 睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
「あー良く寝たなー!」という「熟睡感」や「休養感」は、こころの健康にとても重要と言われています。逆に言えば、「全然寝られなかったなー」「最近布団に入っても全然寝つけないなー」「夜中に何度も目が覚めちゃうなー」などの「寝れなかった感」は、回復した感がなく、気持ちも重たくなり、うつ病にもつながってしまいます。睡眠の量と質を高めて、熟睡感・休養感を得られるようにしましょう。
睡眠不足や不眠症状は、うつ病まではいかなくても、集中して仕事に取り組めなくなったり、頭痛をはじめとした「身体の痛み」として現れたり、モチベーションの低下にもつながることがわかっています。
5) 年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
日本の成人の半分以上(約6割)は「6時間〜8時間」の睡眠時間をとっているそうです。その人に必要な睡眠時間というのは人それぞれです。年齢を重ねれば重ねるほど必要な睡眠時間は短くなっていくこともわかっています。男性は特に、歳をとるにつれて朝型になる傾向が強くなることもわかっています。
睡眠はとればとるほど良いというわけでもありません。睡眠時間は、短すぎても長すぎても健康には良くないと言われています。昼間〜夕方に眠くならない程度の睡眠時間があなたにとってベストな睡眠時間です。自分は何時間睡眠をとると1日調子が良いのか、調べてみましょう。
6) 良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
寝室の温度や湿度は、寝つきの良さや睡眠の深さに影響を与えます。ヒトは徐々に体温が下がってくると眠くなります。寝室の温度が寒すぎると、体温は急激に下がるとともに、それ以上熱を体内から逃さないようにして体温が下がらないようにします。逆に暑すぎると、体温は上がってしまい、汗もかくので寝付きが悪くなってしまいます。季節によって、自分が快適と感じる温度や湿度を見つけ、寝る環境を整えましょう。
また、「部屋の明るさ」も良い睡眠をとるためのキーポイントです。明るい光には目を覚ます力があるため、寝るときに部屋が明るすぎると(白っぽいと)、深い眠りにつくことができなくなってしまいます。部屋を真っ暗にする必要はないですが、寝るときは暗めにした方が睡眠の質は上がります。
7) 若年世代は夜更かしを避けて、体内時計のリズムを保つ。
思春期になると、子どもの就寝時間は遅くなってきます。これは、学校後に習い事に行き始めたり、家から遠い学校に行くようになって通学の時間が長くなるから、などの要因があるようです。
身体は、毎朝起きた時に浴びる太陽の光によって、毎日体内時計をリセットして、一日の時を刻み始めます。よって、朝太陽の光を浴びるのが遅れれば遅れるほど、夜眠くなってくる時間や寝付くことができる時間も遅くなっていきます。夜寝るのが遅くなれば、次の朝もなかなか起きられなくなり、体内時計をリセットする時間がもっと遅れて、、、と、どんどん体内時計がずれていってしまいます。
規則正しい生活を心がけ、なるべく毎朝同じ時間に起きて、すぐに太陽の光を浴びて体内時計をリセットすることで、夜もしっかり眠ることができるようになります。
厚生労働省の調べによると、起きる時間をいつもよりも3時間遅らせた生活を2日間続けた場合、体内時計は45分程度遅れてしまうと示しています。
8) 勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
睡眠不足は、注意力や集中力が散漫になり、作業能率を低下させ、生産性も下げ、事故なども起きやすくなります。
睡眠は疲労回復の一番の方法なので、睡眠不足が長く続いてしまうと、疲労はなかなか回復せず、むしろ蓄積し、疲れていきます。そこでよく、平日の睡眠不足を補うために、休日にいつもよりもたくさん寝て「寝だめ」をする、という人がいるかもしれません。が、「睡眠をためることはできない」と科学で明らかになっています。
また、上記しましたが、睡眠不足を補おうと昼間くらいまで寝ていると、体内時計のリセットが起きないため、生活が夜型となり、ますます夜寝れなくなったり、朝の目覚めの悪さへとつながります。
昼間の仕事中に眠くなったら、それは睡眠不足のサインです。睡眠時間を確保できるよう生活を見直しましょう。とは言っても、仕事のシフトなどでどうしても夜睡眠時間を充分にとれない、という方もいるでしょう。夜の睡眠不足を補うためには、午後の早い時間に行う「昼寝(30分以内)」が効果的だということがわかっています。
9) 熟年世代は朝晩メリハリ、昼間に適度な運動で良い睡眠。
上記しましたが、年齢を重ねれば重ねるほど必要な睡眠時間は短くなっていきます。20歳代と65歳の方の必要な睡眠時間を比べると、約1時間も少なくなると考えられています。
2) で「運動は睡眠の質を高める」ということを紹介しましたが、日中に適度な運動をすることで、昼間より活発に活動をすることが可能になるとともに、その状態を維持、または向上するため、結果として睡眠が安定し、熟睡感の向上につながります。
10) 眠くなってから寝床に入り、起きる時間は遅らせない。
就寝の時間(=眠りに入る時刻)は、季節や、一日どれくらい動いたかなどによって変化するので、一年の間毎日同じ時刻に眠りに入る、というのは自然ではありません。また、就寝する2〜3時間前の時間帯は一日の中でもっとも寝付きにくい時間帯と言われています。
眠くないのに無理して寝ようとして早く寝床に入ってしまうと、寝なければいけないと緊張してしまい、眠りに入りづらくなってしまいます。よって、その日の眠気に応じて「眠くなってから寝床につく」ことが、スムーズに寝つくコツです。眠くはないけど、明日朝が早いからどうしても早く寝たいと言う場合は、まず自分に合った方法で心身ともにリラックスさせて副交感神経を優位にし、それから寝床に入りましょう。
就寝時刻は眠くなってから寝床について寝ればいいのですが、起きる時間は起きたくなってからではなく、なるべく毎日同じ時間に起きるようにしましょう。
11) いつもと違う睡眠には、要注意。
「睡眠中の激しいいびき」は、睡眠時無呼吸症候群などの睡眠中の呼吸に関連した病気の可能性があり、注意が必要です。また、就寝時の「足のムズムズ感・熱感」はレストレスレッグス症候群(←大塚製薬のウェブサイトにとびます)、「睡眠中の手足のぴくつき」は周期性四肢運動障害(←「睡眠障害のことがわかるサイト」にとびます)の可能性があります。これらの病気があると、一定時間眠っても休息感が得られず、日中に異常な眠気をもたらすことがあります。さらに、「睡眠中の歯ぎしり」がある人は顎関節の異常や頭痛を持つことが多いことがわかっています。
12) 眠れない、その苦しみを抱えずに、専門家に相談を。
睡眠の量や質を良くしようと色々なことを変えてみたものの全然良くならず、日中眠くなる人や、疲労が蓄積してしまう人もいるかもしれません。色々工夫してみても改善しないと感じたときは、早めに専門家に相談してみましょう。よく眠れなかったり、あるいは日中眠たくて仕方がない、といった症状は、もしかしたら「からだやこころの病」になっているサインの可能性もあります。医師などの専門家に相談することが大切です。
まとめ
以上が「睡眠12か条」です。
今回は、厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針2014」に沿った形で、より良い睡眠をするためにできることを紹介しました。1つでもできそうなものがあれば、やってみてください。次の日の身体の感じが変わるかもしれません。